私は普段、畑で野菜を作っています。同じトマトでも、季節や天候、土の状態によって味が違います。一本の株でも、初めの頃に実ったものはうまいのに、上の段になるにつれて味が変わってくる。「なぜだろう」と思いながら、野菜とはそういうものだと思っていました。
ところが調べてみると、女子栄養大学の辻村卓教授が「野菜の旬と栄養価」について長年研究されていました。きっかけは、夏のほうれん草のビタミンCを測ったところ、予想していた値よりずっと少なかったことでした。そこから教授は季節と栄養価に着目し、一年間毎月、同じ野菜を購入する調査を長年続けました。
その結果、多くの野菜には栄養価の高くなる「山」があり、それが昔からいう「旬」と重なっていました。ほうれん草のビタミンCは季節によって約4倍、ブロッコリーのカロテンも約4倍、ばれいしょでは約5倍もの違いがあったそうです。
これほど身近な野菜なのに、私自身探してみても、季節ごとの栄養価を長期間調べた資料は、なかなか見つけられませんでした。
毎日食べている野菜にも、まだ分からないことがある。
そう思うと、いつもの畑を見る目まで少し変わります。南伊豆で育てた野菜はどうなのだろう。土が違えばどうか。同じトマトでも実る順番によって、味だけでなく中身も違うのか。昔から地域の人が「この時季が一番うまい」と言ってきたことにも、理由があるのかもしれません。
考えてみれば、南伊豆には、こんな「なぜだろう」がたくさんあります。
今、早稲田大学の学生を中心とした「田舎留学プロジェクト」の若者たちが南伊豆に滞在し、地域の皆さんと活動しています。耕作放棄地を開墾すれば地元農家が応援する。長命草は地元の加工業者が乾燥・粉末にし、地元のお蕎麦屋さんが製品づくりを支える。温泉が自噴する土地では、その熱を利用した鬼手長エビの養殖も始まっています。
若者だけでもない。農家だけでもない。事業者だけでもない。「みんなで」が、少しずつ動き始めています。
そして今は、こうした地域の動きを自分たちで伝えることもできます。若い人たちが映像をつくり、地域の人が支え、テレビだけでなくインターネットを通じて外へ発信する。小さな地域だからこそ、顔の見える人たちがつながって、一つの物語をつくることができます。
海、山、温泉、農地、野菜、長命草、そして、この土地で暮らしてきた人たちの知恵――。
当たり前にそこにあるものも、若い人の新しい目を加えて、調べ、試し、工夫し、そして発信することで、新しい価値が見えてくるのではないでしょうか。
南伊豆そのものが、すでに一つの大きな「学びの場」になり始めているのかもしれません。
「田舎だから何もない」のではない。
身近すぎて、その価値にまだ気づいていないだけなのかもしれません。
南伊豆、そして賀茂地域には、まだ調べてみたいこと、試してみたいこと、そして伝えてみたいことがたくさんあります。
私たち自身が、もう一度足元を見つめ、この地域にもっと自信を持ってもよいのではないでしょうか。
10月1日 渡辺良平

